Stockmark Tech Blog

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芝浦工大附属中高の皆さんの企業訪問レポート

ストックマークの技術広報の安藤です。

2024/8/30に芝浦工大附属中学高等学校の方々がストックマークへ探究学習の一環として企業訪問にいらしてくださいました。

生徒の方々の取り組みや、ストックマークで行わせていただいた内容について本記事ではレポートとしてお届けさせていただきます。

芝浦工大附属中学高等学校で取り組みされている「探究学習」とは?

芝浦工業芝浦工大附属中学高等学校にて2021年4月から始められた取り組みで、問題解決型学習(PBL)を取り入れたカリキュラムの実践を通して、未来を創造できる人材育成を目指すというものです。

取り組みの内容について詳しくは芝浦工大附属中学高等学校のプレスリリース( https://www.shibaura-it.ac.jp/headline/detail/nid00001788.html )に情報が掲載されているほか、公式のXアカウントからも発信されています。

非常にユニークな「ドラえもんの秘密道具を考える」といった課題からモノ・コトの目的や価値についての思考を深める発想が行われていたり、今回ストックマークを訪れていただいたように校内で完結せず、様々な場所への訪問や体験を通しての学習を行うという形で行われています。

生徒の方々の発想や自主性・柔軟性についてが大いに伸びる形での学習が日頃が行われているということが、皆様の講義を聴く姿勢、しっかりと問題・課題を意識した質問を行うような姿勢から訪問をいただいた私達にも強く伝わるものでした。

芝浦工業大学附属中学では2022年から学生の方々にストックマークが開発・提供を行っている「Anews」「Astrategy」を用いた市場や情報の調査を探求学習のためのツールとしてご利用いただいています。

詳しくはこちらのプレスリリースをご覧ください。

授業で使っているサービスはどのように開発されているのか?ストックマークのプロダクト開発についてを詳説

今回ストックマークではプロダクトマネージャーの中尾から「ストックマークのプロダクト開発〜データとAIの活用事例〜」というタイトルでの講義・座談会を行わせていただきました。

講義の様子

授業で使っているサービスの開発や運用にはどのような人達が関わっているのか、それらの人々が関わってどのように開発の意思の決定が行われているのか、ユーザーさんにとっての価値とは何か、ユーザーさんの課題をどう解決するのか、組織のビジョンとはどういったものかという、サービスを切り口として、SaaS企業ではどのような事が行われているのかについてを広くお伝えする講義となりました。

ストックマークの体制では、プロダクトについて何を作るかを検討する”プロダクトマネージャー”、実際のプログラミング開発・設計を行うエンジニア、見た目・体験の設計を行う”デザイナー”、開発したサービスをどう届けるかを検討・実行する”プロダクトマーケティングマネージャー”、どう使われているのかを分析する”データアナリスト”、AI部分を開発する”AIリサーチャー”など、様々な役割のメンバーが協力をしてプロダクトの成功を目指しています。

プロダクト開発で、意識するべきことはなにか、避けるべきことや落とし穴はなにか、対価をいただくだけの価値を提供できるか?

成功するプロダクトを作るために意識していることについて「ビジョン」「ユーザー価値」「事業収益」という大きく3つのトピックに分けての解説が行われました。

ビジョンとは

機能開発をする際にNGなケースとして「ユーザーにほしいと言われたものを何でも作る」事が挙げられていました。 それは何がよくないのかというと、ユーザーさんそれぞれの要望を個々別にこなしていると、それぞれの個人には最適化されているかもしれないが、別の人には全然ピンとこない、もしくはそもそも必要がない、他の誰にも使われない機能になってしまうということが予想されます。 そのようなことがないよう、プロダクトとして誰の何の課題解決するために 、何を提供し、開発をするべきなのか、それを支えるのがビジョンの存在です。ストックマークは目指す世界・ミッションとして「価値創造の仕組みを再発明し、人類を前進させる」というフレーズを掲げていますが、このミッションを踏まえ、ユーザーが価値の創造により集中できる環境を提供することを目指した世界観に落とし込まれています。

ビジョンが定まっていることにより、目指すべき指針、提供すべき価値がブレることなく、ユーザーに届けるべき機能を開発することができます。

ビジョンについて、創業者の想いや経験が反映されていることやAnewsには前身のアプリ(もともとは個人向けのサービスだった!)があり、この形に到達するまでの来歴についても講義内で触れていました。

ビジョンの由来となった、現代社会における情報収集の大変さ、その課題の解決、そしソリューションとして提供したものを利用する人が増えて、ビジョンがだんだんと磨かれ、共感する人が集まるようになるという話についても取り上げており、このセクションは座談会後に生徒の方々からの感想でも「多くの気付きを得た」など、ご好評いただいたセクションとなりました。

ユーザー価値とは

作成されたサービスは、どのように価値を感じて使い続けてもらうかが肝要です。

「価値がある」とは、受け取る価値が支払うコストよりも大きいと感じられる状態であり、受け取る価値とは、お客様が感じている課題を解決できているかの度合いとして話されました。

実際に、Anews・Astrategyが取り組む課題解決の代表例として、組織における「情報収集」が挙げられます。 この十数年足らずでインターネットを流通する情報の量は34倍ほどにも膨れ上がりました。情報が過剰に多すぎる時代となり、それにつれ情報収集に掛かるコストが非常に高くなり、そして今後ますますその傾向は強くなると予想されます。

ストックマークのお客様として多くいらっしゃる製造業事務系労働者の方の情報収集の業務コストは年間1.8兆円とも言われています。

製品のライフサイクルの短命化や消費者ニーズの多様化で情報収集の範囲がさらに拡大し、今までの情報収集の方法を見直すという時代になりました。

ストックマークが提供するユーザー価値は、AIによる高精度な情報推薦技術・社内外の情報の検索・要約の生成などの機能によって情報収集にかかる時間やコストを大幅に削減し、より業務に注力することが可能になり、さらに収集される情報から組織内のナレッジの共有やコラボレーション・イノベーションの促進を行うことにも波及します。

具体的にどのような機能を提供しているかについてはAnewsの実際の画面を交えての説明が行われました。

事業収益とは

事業を継続するためには、ストックマークの提供している価値に対して対価をいただき、しっかりと事業収益を得ることで、事業に必要な投資をおこなっていく必要があります。

事業収益を得るためにどうするかについて、まずはビジネスモデルの紹介から説明が行われました。販売モデル、広告モデル、フリーミアムモデルなどビジネスモデルには様々なものがありますが、AnewsなどのSaaS事業はサブスクリプションモデルに相当します。

サブスクリプションモデルにおける収益の増加例として、単価を増やす・利用者を増やす・解約を減らすなどが挙げられますが、ビジョンとユーザー価値を押さえながらそれらをどのように行っていくのかを考える必要があります。

前述にも記載した、ユーザー価値を高めることで高単価でも利用していただける機能を提供すること、Anewsを個々人だけでなく組織での活用を促す・組織活用を行いやすいようにする機能によってより多くのお客様に契約をいただくこと、より使いやすいプロダクトにすることで、長く使っていただけるようにすることなど、ストックマークで行っている事業収益を上げるための取り組みについてが紹介されました。

プロダクトの成功に向けた開発の工夫

プロダクトの開発や成功のために「ビジョン」「ユーザー価値」「事業収益」といったテーマを意識していますが、実現はそう簡単ではありません。

では実際にストックマークではどのような開発フローによって機能が開発・提供されているかについてが紹介されました。

市場や競合の分析、利用者からの要望や実際にどのように使われているかの記録を分析し、仮説の構築・検証を行ってそれらを機能要件に落とし込み開発、そしてリリースされたものについてをさらに評価してまたどのように使われているかを分析する…というフローが回っています。

このフローの仮説の構築検証について、データアナリストが実際にどのような調査を行っているかなどが紹介され、より具体的な業務についてが解説されました。

講義の締めくくりには、前段で解説されたことをすべて踏まえて、Anews、Astrategyのようなプロダクトはどのように開発されているかということが伝えられました。

芝浦工業大学附属中学の皆様からの質疑・フィードバック

講義のあとは座談会として質疑応答の時間を設け、まずは事前に寄せられていた質問についての回答が行われました。

AIがどのようなアーキテクチャで動作をしているのかという技術的なものをはじめ、会社組織がどのように興ったのかや、働き方・ビジネスについての質問が多く寄せられ、まさに自分たちがまだ体験していないことについて積極的に知りに行こうという学びに対する姿勢が伝わるものでした。

言語モデルの仕組みの解説から、AIが諧謔を理解しているのか?という質問に対する回答を行う様子。

質疑の時間は非常にあつい盛り上がりを見せ、本当にギリギリ時間いっぱいまで質問と回答が繰り返されました。

「デザイナーとエンジニアが対立するというよく聞く話は本当のところはどうなのか?」「カスタマーサクセスとはどんな業務なのか?」という実務に関することや、Anewsの実装についてかなり切り込んだ「収集した情報の再フェッチはどうなっているのか」「社内情報を検索する際の権限制御はどうなっているのか」という鋭い質問が繰り出され、芝浦工業大学附属中学の方々のソフトウェア開発の知識・リテラシーが非常に高レベルであることが伝わります。

中には軽量な言語モデルは自分自身でも作ってみたことがあるという方もおり、ストックマークの社員全員が本当に驚きを隠せませんでした。

質疑のあと、退室が行われるまでのその間にも社内でブレストが行われた際のホワイトボードから実務の様子を読み取ったり、エンジニアへの質問や進路の相談などが行われており、本当に余す所なく探究学習に取り組んでおられました。

結びに

今回企業訪問で来社いただいた皆様へ講義を行わせていただくという形のイベントでしたが、学びの姿勢や物事を捉える目線など、私達のほうが学ばせていただくことも本当に多くありました。

このイベントのあとに寄せていただいたフィードバックについても、ストックマークに対して持っていたイメージが明確なビジョンがあり人々が活き活きしているという印象に塗り替えられたという言葉や、チームでの仕事に取り組む姿勢・仕事を楽しんでいる感じが格好いいという大変に嬉しい言葉をいただきました。

芝浦工業大学附属中学の方々がこれからの社会を支えてくださるということに心から頼もしさと楽しみを覚えています。

あらためて、ご来社いただいたことに社員一同御礼申し上げます。